アザミの花束を

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■ジャンル
 サスペンス

■男女比率
 1:1:2(♂:♀:不)

■所要時間
 約45分

■あらすじ
 蒼夜は1年前に彼女・陽菜が惨殺されたこよにより復讐を誓った。
 陽菜の衣服から銀髪を採取していた蒼夜は陽菜を殺した犯人がネロだとわかる。
 両親をネロに殺された親友・空汰と情報屋の森野と共にネロを追っていた。
 そして、ついにネロの尻尾をつかむことができた……

■登場人物
 蒼夜(そうや):♂
  黒髪の澄んだ目をしている爽やかな青年。
  彼女・陽菜を殺されてからは澄んだ目は荒み、
  ネロを恨み、ネロを追い続けている。
 陽菜(ひ な):♀ ※セリフなし
  赤髪のツインテールの女子大生。
  蒼夜の彼女で1年前に惨殺される。
 空汰(くうた):♂(不問)
  茶髪で明るい少年のような青年。
  蒼夜に子ども扱いされるが頼りにされてる親友。
  陽菜とも友達であり、蒼夜のことを慕っていて復讐に協力する。
 朱里(しゅり):♀
  赤髪の妖艶な感じの女性。
  空汰のバイト先で働いている社員さん。
  空汰の面倒をよく見て、空汰の事を信頼している。
 森野(もりの):♂(不問)
  空汰の両親の事件のことも知っていることから、
  一緒にネロを追いかけてくれている探偵。
  空汰や蒼夜と年齢はそう変わらない。

■声劇コピー用
 蒼夜:♂:
 空汰:不:
 朱里:♀:
 森野:不:

■声劇用扉絵

作者:ranaECHO
注意:本画像は【アザミの花束を】を上演する生放送・動画のみで利用を許可します。
   それ以外の利用を一切禁じます。

■その他
 本ページは一括版(45分)です。
 一括版を生放送で上演する場合は、延長枠が必要になりますので、注意して下さい。
 30分で区切る場合は、
 生放送用2部構成版(第1部:約20分第2部:約25分)をご利用下さい。

 ところどころ()で演技指導のト書きが入っていますが、
 無視しても問題ありません。

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(陽菜の誕生日の帰宅途中)

蒼夜:空汰、今日は陽菜の誕生日プレゼント買うの付き合ってくれてありがとな。

空汰:ううん、いいよー

蒼夜:お前のおかげでいいプレゼントが買えたよ

空汰:蒼夜は彼女の気持ちわからないもんねー
   彼氏じゃないボクのほうがよっぽどわかってるよ

蒼夜:(からかうように)空汰は少女趣味だからなぁ

空汰:(拗ねるように)そんなことないよ!

蒼夜:あはは、でも、空汰のおかげでほんと助かったよ。

空汰:(笑顔で)いいえ、どういたしまして

蒼夜:あ、バースデーケーキ買い忘れてた。

空汰:ええ!?誕生日なのに!?

蒼夜:ごめん、一人で買ってから帰るから。
   空汰は先に帰っていいよ。

空汰:そっか、わかった。
   じゃあ、また明日ねー!

蒼夜:うん、今日はありがとう!

空汰:うん、バイバーイ!


(場面:蒼夜のマンション廊下)


蒼夜:(嬉しそうにプレゼントを抱えながら)
   ふふ、陽菜のやつ喜んでくれるかなぁ〜

(部屋のドアを開ける)

蒼夜:(明るく)ただいまー…陽菜ー?
   (不思議そうに)あれ…いないのかな…?陽菜ー?
   (濡れたものを踏んで驚く)
   ……うわっ…なにこれ……血……?
   (辺りを見まわしながら陽菜を探す)
   陽菜…?
   (部屋の片隅に血まみれの陽菜を見つける)
   陽菜!あ…あああ……!
   (息のむ)ひ…な…?
   (絶叫)陽菜?!陽菜ッ!!!
   (困惑/絶叫)なんなんだよ…なんで…陽菜がッ…!!
   クソッ!!!!


(場面:陽菜のお葬式)


蒼夜:(すすり泣きながら陽菜の遺影を抱く)
   ……ひな………陽菜……

空汰:(声かけづらそうに)
   ……蒼夜…

蒼夜:(すすり泣き声)………

空汰:……あのさ…大丈夫…?
   お通夜の時から一睡もしてないよね…
   それにご飯も…ほとんど食べてないし…
   少し休んだ方が…

蒼夜:(遮って怒り気味)大丈夫なわけないだろ!?
   陽菜が…陽菜が殺されたんだぞ!?

空汰:……ごめん……

蒼夜:(殺してやるを呟く)………してやる……

空汰:えっ?

蒼夜:(静かに)殺してやる…(強く)殺してやるッ!!
   陽菜を殺した奴を見つけ出して、絶対に殺してやるッ!

空汰:蒼夜…?

蒼夜:(荒々しく)止めても無駄だからなッ!絶対に復讐してやるッ!
   そのためなら誰が死のうが構わないッ!
   邪魔しようっていうなら、空汰ッ!…お前だって例外じゃないッ!

空汰:蒼夜…ボクは復讐を止めたりなんてしないよッ
   蒼夜はどう思ってくれてるかわからないけど、
   ボクは蒼夜のことを親友だって思ってる…
   それに蒼夜の気持ちがわかるから…協力したいんだ。

蒼夜:(冷静になる)…空汰……ごめん……

空汰:ううん、いいよ。蒼夜の気持ちはわかってるって言ったでしょ?
   …ねぇ、犯人に心当たりはあるの…?

蒼夜:いや……
   でも、陽菜の服に付いていたこの銀髪…
   明らかに陽菜のものでも、俺たちの知ってる誰のものでもない…

空汰:(息をのむ)……ッ……その銀髪……ッ

蒼夜:(身を乗り出す感じ)何か知ってるのか?!

空汰:前に話したと思うんだけど、蒼夜は覚えてるかな?
   ボクの両親は殺されたって……

蒼夜:ああ……

空汰:…ボク…その時ね、実は両親が殺されるところを見ちゃったんだ…
   顔は見えなかったんだけど、その時の犯人が…銀髪だったんだ…

蒼夜:え……

空汰:調べてみないとわからないけど…
   あの時の刑事さんにその銀髪を調べてもらえないか聞いてみようか

蒼夜:…わかった、これは空汰に預けておくよ…


(場面:1年後の蒼夜の部屋)


蒼夜:(うなされている)
   ……ひ…な………陽菜……

空汰:(慌てて起こす)蒼夜!蒼夜ってば!!

蒼夜:……ん……んん……
   …空汰……

空汰:(心配そうに)大丈夫?
   なんかうなされてたみたいだけど…

蒼夜:(具合悪そうに)ああ、大丈夫だ…

空汰:(心配そうに)もしかして、またあの時の夢でも見たの…?

蒼夜:……ああ。

空汰:(静かに)…あの事件から1年かぁ…

蒼夜:(呆然と)…1年…、
   (冷静に)…時間だけがどんどん過ぎてくってのに、
   (悔しい)何の情報も得られないなんて…ッ!

空汰:(困惑、ためらい)
   あの日、陽菜ちゃんの服についていた銀髪から
   殺し屋のネロってことは調べはついたんだけど…

蒼夜:(悔しそうに)でも、奴は依頼をしなきゃ姿を現さない……
   そんな奴、どうやって見つけ出せばいいんだよッ!

空汰:(少し間をおいて)……方法はあるよ。

蒼夜:(驚く)えっ…?

空汰:ネロに殺人を依頼すればいい。
   そうすれば、奴は必ず姿を現す。
   (少し間をおいて)
   …今日はこれを渡すために来たんだ。

蒼夜:…ん…これは…?

空汰:情報屋の森野さんからもらった…ネロの連絡先…
   それと…これ…

蒼夜:…拳銃…?

空汰:さすがに弾は一発しか手に入れられなかったけどね。

蒼夜:(静かに呟く)……空汰……ありがとう…
   (穏やかに)復讐のことも反対せず俺を受け入れてくれた。
   それどころか協力してくれて…

空汰:クス、お礼なんていいよ。
   蒼夜の気持ちはボクが一番わかってるんだから。

蒼夜:陽菜のためにも、空汰の両親のためにも。
   必ず復讐を遂げよう。

空汰:(意気込み)うん、ボクにできることがあったら協力するよ。
   だって、ボクたちは一番の親友なんだから。

蒼夜:…ありがとう
   (ちょい心配そうに)ってお前時間大丈夫か?

空汰:え?うわぁーもうこんな時間?!
   ごめん、バイト遅刻するから今日は帰るね!

蒼夜:あ、おい…ったく、あいつは…

(しばらく間をおく)

蒼夜:これでッ…!これでついに…ッ!
   ついに陽菜の復讐が果たせる…くふふ…!
   ネロに殺人の依頼をしておびき出すのはいいとして
   いったい、ネロに誰を殺させる……?
   (考え込む間)…………
   …誰でもいいとは思ったけど、赤の他人じゃ行動が読みにくいし、
   ネロなら俺が近くにいることを不自然に思うに違いない…
   (考え込む感じ)
   …行動が読めて、近くにいても自然な奴…
   あぁ…そうだ、あいつがいるじゃないか…空汰が…
   ふふふ…協力してもらおうじゃないか、復讐のためにな…
   くはははは!


(場面:空汰のバイト先)


蒼夜:(静かに見守る)
   今日が…実行日…
   空汰の後をつけていけば…ネロは現れる…
   (気づいたふうに)
   っと…やっと出てきたか…

空汰:お疲れ様でしたー!

朱里:あ!空汰くん、お疲れ様。
   最近、調子どう?

空汰:あれ、朱里さん…
   社員はみんな本社じゃなかったんですか?

朱里:ちょうど今戻ってきたところよ。
   堅苦しい会議なんてもううんざり…
   やっぱり、自分の店舗が一番よねぇ

空汰:今日は特に忙しかったんですよ!
   朱里さんがいない分、ボクがフォローしたんですからね。

朱里:さっすが〜、できる男は違うわねぇ

空汰:褒めるぐらいなら給料あげてくださいよ〜!

朱里:うふふ、考えておくわ。
   ところで、空汰くん。今から時間あるかしら?

空汰:はい…大丈夫ですけど…

朱里:(安心して)そう、よかった。
   じゃあ、ちょっと一緒に付き合ってほしいところがあるの。

空汰:え?ここじゃダメなんですか?

朱里:ここじゃ息抜きなんてできないでしょ?

空汰:そうですね、わかりました
   それで…どこにいくんですか?

朱里:うふふ、ついてくればわかるわ


(場面:廃れた展望公園)


朱里:ついたわ、ここよ。

空汰:だいぶ歩きましたね…

朱里:ごめんね、こんなところまで連れ出しちゃって…

空汰:いいですよ、それよりここに何があるんですか?
   見たとこ普通の公園みたいですけど?

朱里:ついてきてほしい場所っていうのはこっち。

(町が一望できる場所に移動する)

朱里:……ここよ、見てみて

空汰:ん…うわぁ!凄い!綺麗な眺めですねー!

朱里:この展望公園、やっぱり町から離れてるせいか
   今はこんなに廃れちゃって…
   ここができたばかりの頃はとってもにぎわっていたのよ。
   でも、今でも変わらないのはこの夕陽だけ。
   とっても綺麗でしょ?

空汰:そうですねー!
   (背伸びをする)んーっ!風もほんっと気持ちいいですね!

朱里:(色っぽく)そう、喜んでもらえて嬉しいわ。

空汰:ところで用事って…

(銃を突きつけられる音)

空汰:え!?朱里…さん…?

朱里:…クスッ……

空汰:ボクの頭に近づけてるのは……

朱里:決まってるじゃない、銃よ。

空汰:え…銃って…なんでそんなもの持ってるんですか?
   (ひきつった笑いで)冗談ですよね…?

朱里:冗談かどうか空汰くんの頭で試してあげましょうか?

空汰:えっ!?

朱里:動くんじゃないよ!!
   前を向いてな。

空汰:……ッ!

朱里:ふふ…何も知らずに死ぬのもかわいそうだから教えてあげるわ

空汰:え……

朱里:私がネロよ。依頼があったの、あなたを殺せって、うふ

空汰:ッ!?…まさか…

朱里:そう、あなたのお友達からよ
   確か名前は蒼夜くんだったかしら、うふふ

空汰:そんな……蒼夜が…ボクを殺すように…依頼したの…?

朱里:あなた、お友達に相当嫌われているようね、それも殺してやりたいほど…

空汰:…そんなことない…ッ!
   蒼夜は…蒼夜はボクの一番の親友なんだっ!
   そんなことするはずがない!

朱里:残念だけど、依頼があったのは事実よ?
   なんなら、聞いてみる?

空汰:な、何を…?

朱里:最近の携帯電話は便利よねぇ…通話中の音声を録音できるんだから…
   ちゃんと残してあるわよ。

空汰:…ッ!嘘だっ!!
   蒼夜が……ボクを裏切った…?

朱里:理由はなんにせよ、あなたは必要ないんだそうよ?
   (バカにする)むしろ、邪魔者なんじゃないかしら?
   まぁ、私にはどうでもいいことだけど。
   恨むなら、彼を恨むのね……

(再度、銃を突きつけなおす音)

空汰:…ッ!

朱里:それじゃあ…さようなら…

(銃声)

空汰:ッ!?

朱里:…ッ!……だ…れ…ッ

森野:まったく…手間かけさせやがって…

空汰:…ッ!?森野さん!
   た、助けてくれて…ありがとう…ございました

森野:はぁ?何勘違いしてんだ?
   この女は俺の名前を語って、勝手に人の依頼を奪ってやがったんだ。
   他人様の仕事を横から掻っ攫うなんて、無礼にも程があるだろ?
   丁度アンタがネロに依頼をしたいなんていうからさー
   この機会に始末してやろうって思ってなぁ。
   だから、無償で連絡先を渡してやったんだろー?くふふ

空汰:森野さん?…どういうことですか…?

森野:あは…まだ気づかない?
   あーごめんごめん、俺カツラかぶってるんだ。

空汰:…ッ!その銀髪…ッ!

森野:そう、俺が本物のネロだよ
   アンタには礼を言うぜ?
   おかげでこいつが釣れたんだからな

空汰:そんな……森野さんはボクを利用してたの?!
   しかも、ネロだったなんて……

森野:おいおい、忘れたのかよ?
   俺は、アンタの両親を殺した張本人だぜ?
   こーんなに目立つような頭で居るのに、
   お前の記憶の中での俺は一体どんな格好なんだろうなぁ?
   それとも、友達の復讐に茶々入れんのが
   楽しくて自分の仇誰か忘れちゃってた、とかー?

空汰:(悔しそうに)……ッ

森野:自分が助けようとした友達に裏切られてすごーく惨めだな、あー傑作。あはは
   アンタからすればとんだとばっちりだろうケド、
   顔知られた以上、俺に殺されても文句は言えねぇよなぁ?
   (無感情な声で)お前、俺の玩具になってよ?

空汰:えっ!

蒼夜:(勢いよく)死ぬのはお前のほうだ!

(銃を突きつける音)

森野:…ッ!?

蒼夜:まさかあの女が偽物のネロだったとは知らなかったけど、
   (一層憎そうに)結果的にネロ…お前が釣れてよかったよ、あはは

森野:ケッ…油断したか……

蒼夜:動くなァ!!

森野:はいはい、わかりましたよ…クソが…!

蒼夜:拳銃も捨てろ!

森野:チッ…ほらよ!

空汰:…これで形勢逆転だね、この銃はボクが預かっておくよ…

蒼夜:(銃をネロに向けたままだが、声は申し訳なさそうに)
   ……空汰…復讐のためとはいえ、お前の命を狙わせて悪かった…

空汰:ううん……ボクは蒼夜の一番の親友でしょ
   蒼夜の気持ちはわかってる…
   復讐のためならそのぐらいしなきゃだよ。

蒼夜:(穏やかに)…空汰…ありがとう…

森野:(鼻で笑う)ふ……

蒼夜:(少しイラついて)何がおかしい?

森野:(笑い声と共に)両親を殺され、親友に裏切られ
   それでも笑顔で過ごす…なーんて惨めな生き方だなって思ってな、くふふ

蒼夜:(ネロに対してぶち切れる)こいつ…!!
   空汰はな!俺や陽菜のために一生懸命…たくさんのことをしてくれた!
   復讐のために生きるって言った時も俺を止めずに協力してくれた!
   一番の親友なんだよ!(悲痛な叫び)ッ・・・お前に何がわかる!?

森野:俺にはそんなことわかんねぇよ。
   だけど、そんなこと思われてるこいつはどんな気分だろうなぁ?

蒼夜:(驚いて漏れる声)なッ……?!

空汰:く……(鼻で笑い)ふ…あは…あはははははは!!!!

蒼夜:(唖然としながら、比較的ゆっくり)え………?くう、た……?

空汰:あーおっかしー!ここ最近面白いことなかったけど、
   久しぶりにこんなに笑ったよ…くふっ、その表情、たまんない!
   我慢なんてしてる場合じゃないよ…あははは…!!
   蒼夜ァー?今まで騙しててごめんねぇ!

(銃声)

蒼夜:(肩を撃たれる痛みを堪える)…ッ!
   ……空汰、どう、して…??

森野:(嘲るように笑いながら)兄さん、狙うときちゃんと頭狙わなきゃダメだよ

空汰:(笑い混じりの声で)
   ごめんごめん、あまりにも蒼夜がボクのことを褒めるもんだからさ
   手が滑っちゃったんだよねぇ
   ……おかげで頭はずして肩に当たっちゃった…

森野:(笑いの継続)っと…お前にはもう銃はいらねぇわな、あはは

蒼夜:(痛みを堪えつつ悔しそうに)クソ…!!!

森野:(ねちっこく)兄さん、こいつもういらないよね?くふふ

空汰:あはは、そうだねぇ…バレちゃったし
   どうしよっか?

蒼夜:(少し驚いた様子で)兄さんって…どういうことだよ!

森野:兄さんにその口の聞き方、お前殺すぞ?

空汰:(穏やか)ネロ、蒼夜はボクの親友なんだから、
   (冷たく)お前が余計な口出しするな

森野:…わ、わかったよ…

空汰:ごめんね、蒼夜。
   それじゃあ、ボクとネロの関係について説明してあげるよ。
   ボクたちはねぇ、一卵性双生児なんだ、だから、ネロはボクの弟。

蒼夜:(驚きと戸惑い)でも……、髪の色が…

空汰:そんなの茶髪にしてるだけに決まってるでしょ?
   だから、ボクの地毛は銀髪…
   驚いた?あはは

蒼夜:(真実を明かされ怒る)……ッ!
   ネロに両親を殺されたってのは嘘だったのか…?!

空汰:え?ああ…嘘じゃないよ?

森野:口うるさいだけの両親なんて、居なくて正解だよ。

空汰:ネーロ、そんなこと言っちゃダメだよ?
   父さんや母さんたちだって
   ネロに普通の遊びをしてほしかっただけなんだから

森野:その結果、俺に殺されちゃうんだけどねー!

蒼夜:どういう…ことだ…?

空汰:ネロはね、生まれつき殺すことが大好きな子なんだ
   最初は虫とかが嫌いでそうしてるのかなーってボクは思ってたんだけど。
   父さんと母さんはネロの異常性に気付いてそれをやめさせようとしたんだよね
   まあでも、それが原因で父さんと母さんを殺しちゃったんだけどね。

蒼夜:(静かに怒る)……お前ら……自分が何を言ってるのかわかってんのか…?

森野:(前のセリフに被りで入る)わかってるよぉ?
   虫や動物は表情がよくわかんないから味気なかったけど、
   人を殺すのは格別だねぇ〜。あの怯えた表情、たまらないよ!
   命乞いしてる姿なんて滑稽でさぁ!!あははははは!!

空汰:(少し馬鹿にしたように)蒼夜だって似たようなこと考えてたでしょ?
   陽菜ちゃんの復讐のためなら誰が死のうが構わない。
   ボクやネロと蒼夜がそう違うとは思えないけどねぇ?

蒼夜:(マジ切れ一歩手前)ッ!!お前らと一緒にするな!

(銃声)

蒼夜:ぐあああああ!!

森野:自分を棚に上げるなよ、うぜぇなぁ

空汰:(キレる)ネロ!手を出すなって言っただろ!!

森野:っ…ご、ごめん…こいつが兄さんのこと侮辱するからじっとしてられなくて…
   で、でも、ほら!撃ったのは足だから、殺してないよ?
   俺!ちゃんと兄さんの言いつけ守ってるよ!?

空汰:(半切れくらいのトーン)ネロ、二度目はないよ…
   ごめんね、蒼夜。怖がらせちゃったかな

蒼夜:(激痛を堪えながら)っ…く…お前らッ…!

空汰:蒼夜にはもっと幸せになってもらいたかったんだけどなぁ…
   陽菜ちゃんの幸せな顔も見たかったなぁ

蒼夜:(痛みを堪え言葉が途切れるが)ッ…!はぁ・・・?なに、言って……ッ!!

空汰:(遮る)ネロは殺すことが大好きだけど、ボクはそうじゃないんだ。
   絶望のどん底に落とされた時のあの顔が、大好きなんだよねぇ。
   だから、その為にも蒼夜にはもっともっと幸せになってほしかった。
   そして最後に地獄に突き落としてやろうと思ってたのに。
   あの女のせいでボクのシナリオが台無しだよ。

蒼夜:(痛みを忘れるほどにマジ切れ)陽菜のせいって、どういうことだよ!

空汰:陽菜ちゃんさ、ボクとネロが兄弟だって気づいちゃったんだよね。
   1年前のあの日、誕生日プレゼントを陽菜ちゃんに渡しに行った時に言われたんだ。
   「空汰くん兄弟いたんだ、でも、髪の色違うし、顔も似てないね」って。
   …まぁすぐにネロのことだってわかったけどね。

森野:(小ばかにねちっこく)
   あの女、たまたま兄さんの家に入る俺の姿を見ちゃったみたいでさ。
   兄さんの計画を汚すなんて馬鹿な女だな。

空汰:蒼夜が悪いんだよ?ボクを一人で帰さなきゃよかったのに。
   そうすれば、ボクがあんなことしなくてよかったんだ。

蒼夜:(動揺と戸惑い。間は比較的ゆっくり取る)あんな、ことって…

空汰:蒼夜にバレたくなくってねぇ、思わず刺しちゃった。
   まぁ、遅かれ早かれ殺してたけどね。

蒼夜:…ッ!
   お前が…お前が陽菜を殺したのか…!!

空汰:あははは、そうだよ?
   蒼夜ったらそんなボクのこと信じちゃって…
   あは、おもしろかったなぁ

森野:兄さんには疑いがむかないようにわざと銀髪残してもらったんだ。
   じゃなきゃ、俺があんなミスするかよ、あはは

空汰:楽しかったけど、親友ごっこももう終わりだね。

森野:兄さん、今度はちゃんと頭を狙ってね。

空汰:あは、わかってるよ、ネロ。
   蒼夜、今まで楽しかったよ
   ありがとう。

(銃を突きつける音)

空汰:え…?

朱里:(落ち着いた声で)そういうことだったのね、空汰くん。

空汰:なっ…!

森野:兄さん!
   …お前…生きてたのかよ…!?

朱里:(馬鹿にして)あなた、自分の言ってたこと忘れたの?
   『狙うなら頭』なんでしょ?
   あなたが自分の狙った場所覚えてる?

森野:(下唇を噛む)ッ……

朱里:そ、背中。
   伊達にあなたの名前を語ってないわよ
   (憎悪の声で)舐めないで。

森野:くっそ…防弾チョッキかよ…うぜぇ…

朱里:(優しく)助けるの遅くなっちゃってごめんね、蒼夜くん。
   すべてを知りたかったのよ。

蒼夜:(痛みを堪えながら)ッ……。いや…だい、じょうぶ、です……!

空汰:お前ら…まさか…

朱里:蒼夜くんと私を罠にはめたつもりだったんでしょうけど…残念ね、うふふ。
   あなたが送った連絡先のおかげで
   私と蒼夜くんが手を組むきっかけになったのよ

空汰:(悔しがる)…ッ…そんな馬鹿な…!

蒼夜:ふふ…朱里さんは…陽菜のお姉さんなんだよ。

空汰:なっ…

朱里:(懐かしそうに)
   歴とした姉妹だったんだけどね、事情があって孤児院育ちなの。
   2人とも別々の親元に引き取られたんだけど、
   人に話すようなことでもなかったから陽菜は誰にも言わなかったのね。
   あなたたちが知らなくても無理はないわ。
   でも…陽菜は蒼夜くんには話していた。

蒼夜:(落ち着いて)
   殺人の依頼をするために、ネロに連絡をしたんだけど………
   すぐにわかったよ……陽菜のお姉さん…、朱里さんだってね。

朱里:蒼夜くんから話を聞いてみれば、なんてことはなかったわ。
   私はネロをあぶりだすためにネロを語り、
   蒼夜くんはネロに復讐するためにネロを探していた。
   目的は一緒だったのよ。

蒼夜:(静かに)だから、朱里さんと手を組んだ。
   もちろん、空汰に言うつもりだったけど、
   朱里さんに止められたんだ。

朱里:それはそうよ。空汰くん、あなた一番怪しいもの。

空汰:え…

朱里:陽菜の衣服に付着していた銀髪からどうやってネロってわかったの?
   あの銀髪がネロのものだったとしても、
   警察がそう簡単に一般人に情報を漏らすかしら?
   それこそ、あなたがネロのDNAを知らない限り照合できないはずよ?

空汰:く……

朱里:それにこの情報の速さ…
   わずか1年でそこまで突き止めるなんてね。
   とても一般人のなせる技じゃないわ。
   ましてや、銃を入手するなんて、ね…

蒼夜:(少し悲しげに)
   だから、空汰を殺そうとすれば本性を現すんじゃないか、
   例え空汰がネロじゃないとしても、
   本物のネロが動き出す可能性は高かったからな…

森野:……お前ら、そこまで計算して……

朱里:(嬉しそうに)案の定、ネロが姿を現してくれたわ。
   それに陽菜を殺した犯人が…空汰くんのほうだったとはねぇ…

(銃を突きつける音)

空汰:ひ……

森野:(動揺)やめろ!!兄さんじゃない!!俺だ!!

空汰:そ、そうだよ…ボクじゃない…
   ネロが…ネロがやったんだ…
   そ、そうだよ!ボクを殺しても意味がないよ!?

朱里:(呆れる)ふ……どこまでクズなの…
   自分の弟を売るなんて…

空汰:や、やめて…撃たないで…

森野:金ならいくらでもやる!!
   殺したい奴がいるなら殺してやるよ!!
   だから、兄さんだけは!

朱里:じゃあ、ネロ。この男を殺しなさいよ。

森野:(震え)は?ふざけんな!
   兄さんを殺せるわけないだろ!!

朱里:(イラつきながら)じゃあ、私も無理ね。
   蒼夜くん、あなたのその体じゃ無理だろうし。
   私が復讐遂げてあげるわ

蒼夜:ああ……

森野:やめろ!!

空汰:い、嫌だ…!ネロ、助けて…!!

(銃声)

森野:兄さんッ!

朱里:(ざまぁみろって感じで)ちゃーんと頭を狙ったわよ

森野:あ…ああ…!!兄さん…?兄さん!?

朱里:(馬鹿にするように)あらあら、大好きなお兄さんが殺されれば、
   あなたも泣くのねぇ。

森野:(発狂)あああ…貴様ぁ……!!
   貴様、貴様、貴様、貴様!!

朱里:その銃で私を撃つの?
   今度はちゃんと頭を狙いなさいよ?

森野:(発狂)よくも…よくも兄さんを…!!
   死ねぇええええええ!!
   …ッ!?…なんで弾が…出ない…?

(銃声)

朱里:頭に血がのぼりすぎなのよ。
   蒼夜くんに渡した銃は弾が一発しかなかったのに、
   あなた…さっきその銃で蒼夜くんの足撃ったじゃない。

蒼夜:(ホッとして痛みを重い出しながら)ッ……。しゅり、さん……。

朱里:ようやくあなたの復讐は終わったわね。

蒼夜:あ…はい……
   ありがとうございます…

朱里:(微笑みながら、声音を変えて威圧するように)
    でも……。1つだけ…大事な事を、忘れてなぁい?

蒼夜:(素っ頓狂な声)えっ……?

(銃声)

蒼夜:(うめく)かはっ……!!っ…!!

朱里:(静かな怒りと憎悪)私の復讐は…まだ終わってないってこと…

蒼夜:(息絶え寸前、驚き、痛みを堪えつつゆっくり)なん…で……ッ?

朱里:(思いっきり憎悪丸出しで)
   私の大事な妹を奪ったどころか…
   守りきれず殺してしまったあなただって……!!
   私にとっては同罪なのよッ!!?

(3発の銃声)

朱里:(嬉しそうに高笑い)
   うふふ、これで…私の復讐は終わったわ
   陽菜…見ていてくれた?
   ちゃんと復讐遂げたわよ…

森野:(ほぼ瀕死嗚咽多めで)…う…よくも…兄さんをッッ…!!!

朱里:(息を呑んで、振り向くイメージ)っ?!……え!?

(ナイフが突き刺さる)

朱里:(激痛に悲鳴を上げる)あ…ああ…!!!
    ま、だ…生き、て…っ!!!、

森野:(声にならない声でキチガイ)
   へへへ…頭…狙えって言っただろ……ッ…

朱里:(痛みに喘ぎながら)あぐ…う…はぁはぁ……
   …せっかく復讐を果たしたのに…
   (痛みよりも悲しそうに)はぁはぁ……陽菜……ごめんね…
   私も…守れなかった1人だっ、た、ね……っ…(静かに絶命)

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後書き。

ゆうきです!
今回はただ悪役をやりたいという一心が書いた作品でしたが、
気づけば今までで一番の大作になりましたw
裏の裏をかいてとにかく逆転したりするのを考えて書いたので
ハゲそうでした…w
元々演技指導や効果音、BGMをつけてやった台本だったので
読み辛かったら申し訳ありません。
でも、楽しんでいただければ光栄です♪

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